表面処理とは、主に製造工程の最後に行われる、素材表面の性質を高めたり、美観性を向上させたりするために施す機械工作法の一種です。表面処理の種類は、研磨、塗装、めっき、アルマイト処理など複数の分野に分けられています。
今回は、その中の「アルマイト処理」についてご紹介します。
アルマイト処理とは、アルミニウムを電解処理し、表面に陽極酸化皮膜を作り出す表面処理です。
アルミニウムの表面には自然にできる酸化皮膜に覆われているが、その酸化皮膜は非常に薄いため、損傷や化学的な影響、環境によって製品が腐食することもあります。製品の表面を保護し、耐食性と耐久性を向上させるため、アルマイト処理が施されます。
アルマイト処理は、アルミニウム製品を電解質溶液中に浸し、製品を陽極に置いて電流を流すことで行われます。電流を流すことで電気分解が進み、酸素イオンとアルミニウムが反応し、アルミニウムの表面に酸化アルミニウムの皮膜が生成されます。
アルマイト処理の工程は、前処理、アルマイト処理、後処理の3つに分けられています。
<Step 1> 脱脂
アルミニウム表面の油分や汚れを除去する工程です。
▼ 水洗
<Step 2> アルカリエッチング
水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性溶液でアルミニウムの表面を溶解させます。溶解させることで、傷や脱脂で取れなかった油分を除去します。
▼ 水洗
<Step 3> スマット除去
エッチング後に残った表面の不純物を酸性溶液で除去します。
▼ 水洗
<Step 4> アルマイト処理
アルミニウム製品を電解質溶液中に浸し、陽極として電流を流します。電気分解を行うことで、酸化アルミニウムの皮膜が生成されます。
▼ 水洗
<Step 5> 封孔処理
アルマイト処理後にできた酸化被膜には六角形の微細な孔が多数存在します。これらの微細な孔を封じることで、耐食性や耐久性を向上させることができます。また、封孔処理をする前に孔の中に染料を染みこませることで色を付けることができます。これはカラーアルマイトと呼ばれます。
▼ 水洗
<Step 6> 乾燥
最後に製品を乾燥させ、検査を行います。
アルマイト処理とよく間違われやすい処理として、めっきが挙げられます。
アルマイト処理は、アルミニウムの表面だけではなく、素材の表面上に成長皮膜、内部に浸透皮膜という酸化皮膜を上下に作り出す処理方法です。
一方、めっきは、金属の表面に種類の異なる金属の膜をつける処理です。
関連記事:表面処理の基礎知識│めっきについて解説
また、アルマイト処理をする際に、処理を施したい製品を陽極にセットして電流を流しますが、めっき処理はめっきをつけたい製品を陰極にセットして電流を流すという違いもあります。
簡単にまとめると、めっきは製品の表面に金属皮膜を生成させる処理方法で、アルマイトはアルミニウムの表面と内部に酸化皮膜を生成させる技術です。
代表的なアルマイト処理の種類をまとめてみました。
種類 | 膜厚(最小~最大)/μ |
---|---|
白アルマイト | 8(5~30) |
黒アルマイト | 20(10~30) |
カラーアルマイト | 20(10~30) |
硬質アルマイト | 20(5~50) |
※膜厚に関しては、材質によって違いが出るため、上記の数値は目安です。
ここでは、アルマイト処理のメリットとデメリットを解説していきます。
アルマイト処理によって形成された酸化皮膜は金属の表面を腐食から守ることができます。また、変色を防ぐこともできます。
合金によって異なりますが、アルミニウムの硬度はHv20~150が一般的です。アルマイト処理を施すことにより、硬度をHv200~600程度まで上げることができ、耐摩耗性の向上が可能です。
アルミニウムは導電性が高い金属ですが、アルマイト処理によって生成されたアルマイト皮膜は絶縁性を持つため、電流が流れなくなります。
他の金属と比べてアルミニウムは熱伝導性が良い素材ですが、アルマイト処理を施すと、酸化皮膜により熱伝導率はアルミニウムの約3分の1まで下がることができます。
アルマイト処理によってできた酸化皮膜の微細孔に、染料を染み込ませることで、様々な色に着色することが可能です。カラーバリエーションも豊富で、用途に合わせて調整することができます。
アルマイト処理をされた酸化皮膜は高温に弱いです。そのため、通常のアルマイト皮膜は100℃を超える環境で、クラックやひびが生じることがあります。
アルマイト皮膜は硬く、柔軟性が乏しいため、曲げや衝撃に対して弱いです。アルマイト処理をされた製品に対して加工を行うと、アルマイト皮膜に割れや剥離を生じる可能性があります。
製品の用途や使用する環境に応じて、適切な表面処理を選択することが必要です。アルマイト処理は、アルミニウム製品の耐食性、耐摩耗性、絶縁性、装飾性を向上させる表面処理技術です。
その一方で、低い耐熱性や乏しい柔軟性というデメリットも存在します。アルマイト処理の特性を理解し、最適な処理方法を選ぶことで、製品の性能と寿命を最大限に引き出すことが可能です。
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