日本は島国であることから資源に乏しく、原料が不足しているため、企業活動に必要な材料、部品あるいは製品まで海外で調達することが多いです。国際競争力を維持する目的とトータルコストを抑えることができるなど利点も多いことから海外調達比率は増加傾向にあります。しかし、国内調達と比べて、手続き・規則や文化の違いによって、調達プロセスも変わることが課題とされています。本記事では、海外調達の基礎知識から加工部品を海外で調達する際のメリット・デメリットをわかりやすく紹介いたします。
はじめに日本は島国であり、資源に富んでいないため、私たちの日常生活に不可欠な衣料品、食品、住宅資材など、多くの原材料を海外から輸入しています。製造業では、品物の生産に不可欠な材料、部品、製品まで海外調達することが多い傾向です。
企業は国際競争力を維持し、資源不足に対処するために部品や製品を海外から調達しており、これにより海外調達比率が増加しています。合わせて、貿易黒字削減のために最終製品を海外から輸入する企業も増加傾向にあります。しかし、国内調達との違いには手続きや規則だけでなく、文化や商習慣の違いも存在し、調達プロセスに多くの影響を及ぼしています。また、国内調達に慣れた資材担当者が海外調達に取り組む際、国内との取引の違いなどで新たな課題に直面します。そういった新しい形式の調達方法に順応することで経験値が上がるのも事実です。特に海外調達はトータルコストを下げられる利点から、部品調達の分野でもっとも重要視されており、今後も海外調達の増加が予想されています。
海外調達の比率が高まる近年では、「チャイナリスク(中国におけるカントリ―リスク)」を念頭に国内生産の強化や海外調達先を分散する動きが広がっています。米中貿易摩擦、台湾有事、技術盗用などの観点から日本企業でも脱中国の動きが加速しています。これまで、「世界の工場」と言われサプライチェーンの中心に位置していた中国ですが人件費も高騰しており、チャイナリスクが懸念されていることからも中国から生産拠点を撤退している企業が増えています。特に日本では、円安の継続と原材料・輸送費の高騰により、生産拠点の国内回帰も着々と進んでおります。そうした中で、部品調達のサプライチェーンを再構築するためにベトナム・インド・タイなどが注目されています。
出所:2019年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)
ベトナムは、中国以外の国・地域にリスクを分散させる経営戦略である「チャイナ・プラスワン」の一環において、生産拠点移転先として、有力国とされています。労働力が安価なため、IT関連製品や半導体などの輸出需要が急増し、アパレル産業から電気・電子産業まで、幅広い分野の生産拠点がベトナムへ移転しています。特に、最終組み立てなどの製造工程で、他のASEAN諸国に比べて低い賃金水準を維持しており、労働コスト面での優位性が高いことが魅力です。また、中国でビジネスを展開する企業は原材料や部品の中国依存から離れにくい状況です。そうした観点でもベトナムは中国との国境に接しており、陸路での輸送が可能であるため、ベトナムは様々な国外企業のシェアを伸ばしています。
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インドは「Make in India」のスローガンに基づき、製造業の中心拠点になるための政策が強化されています。インド国内の生産に対しての売上増加に伴い補助金を支給する生産連動型優遇策(PLI)などの画期的な政策も導入されました。このようにインド政府が国内に進出する外資企業に向けて多様な分野を開放し、積極的に投資を誘致した結果、日米欧を含む外資企業がインドへの投資を増加させています。また、中国で発生する知的財産権に関連する問題が発生しないことも魅力です。天然資源と若い人材の利点を生かし、格安で工場設備を建設できることもインドの強みとなっています。合わせて、主力産業の自動車、工作機械、医薬品だけでなく、半導体製造の推進も開始されました。2023年では、人口で中国を上回り、世界最大の国となり、製造業の成長と経済規模の拡大が期待されています。
出所:サプライチェーンの「脱中国依存」が鮮明、「インドシフト」が本格化へ(日経BP 総合研究所)
日本の製造業と縁の深いタイは、自動車産業や電気・電子産業を中心に、多くのサプライヤーや関連産業が存在し、特に自動車産業において多くのサプライヤーを持っています。これにより、現地調達率が高まり、企業にとってコスト競争力やリードタイムの短縮といった利点が生まれています。また、タイ政府は気候変動問題への取り組みを強化しているほか、電気自動車(EV)補助金の導入やEVバッテリーの国内生産促進を進めており、今後のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性が高まっています。また、日本企業と太陽光発電システムを工場に設置するなど二酸化炭素を削減する動きも活発です。今後、タイ政府はカーボンニュートラル実現に向けた計画や規制を策定し、新たな経済に向けて推進しようとしているため、自動化やSDGs・カーボンニュートラルなどの環境意識の高い企業にとっては、良きビジネスパートナーとなるでしょう。
出所:特集:現地発!アジア・オセアニア進出日系企業の現状と今後(ジェトロ)
これまで述べた「チャイナリスク」の観点だけでなく、アジア諸国の産業高度化や政策によって、部品調達におけるサプライチェーンの構造は変化する可能性があります。海外で部品調達する際には、対象国の経済状況について注意しましょう。
加工部品調達のプロセスにおいて、海外調達を行うことは、多くのメリットがあります。
下記には、そのメリットと考慮すべきポイントをご紹介します。
加工部品を調達するにあたって、海外の加工部品調達先を確保することは、企業にとって効果的なコスト削減の鍵となります。たとえば、東南アジアの国々、ベトナムを例に挙げると、部品の生産を通じて、コスト面で効率の良い部品供給が実現可能です。日本よりも物価が安い国で加工することで、国内加工するよりも安価で済むため、コストを下げて調達できます。また、海外に生産拠点を置いて、現地調達を実現することで、コスト面でメリットが高い部品供給を円滑に行えます。多くの企業がこの戦略を元に海外におけるサプライチェーンの構築や現地調達・生産を行っています。
日本は島国であることから資源に乏しい一面があります。サプライチェーンにおいても資源や材料を安定供給することは重要な指標になります。近年では、デジタル化やカーボンニュートラルなどの社会的な変化により、電子機器や再生可能エネルギー発電などの構成部品の性能向上と小型化に必要な鉱物の需要が高まっています。特に「銅などの重要鉱物」や「レアアース・リチウム・タングステンといったレアメタル」は需要が急増しており、現在のところ他の物質で代替できないため、その重要性がますます高くなっています。これらの希少な資源や日本では入手が難しい材料を海外調達により、確保することは企業にとっても大きなメリットとなります。
出所:日本の新たな国際資源戦略 ③レアメタルを戦略的に確保するために(資源エネルギー庁)
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海外調達は部品調達担当にとって、多くのメリットをもたらしますがデメリットも発生します。
下記には、課題となる代表的なデメリットをご紹介します。
海外部品調達のデメリットの一つは、納期の遅延です。部品の製造に要する時間は国内とあまり変わりませんが、海外からの輸送には時間がかかります。船舶輸送では2~3週間かかることもあり、一部の国では関税の処理に遅れが生じることもあります。また、海外企業の生産・物流管理が不十分であることが原因で遅延することも多く、急いで部品を必要とする場合には海外調達は適さない場合もあります。
海外で製造された部品は、技術者のスキルや工作機械の精度により日本国内で生産した部品と比べて、品質が低くなるケースがあります。国によって、商習慣の違いや安全・品質基準が異なることも品質低下につながります。小ロットではクリアできたとしても量産になると不良品が多く混入し、結果的にコストが上昇することも考えられます。また、欧州では、RoHS(ローズ)指令といった有害物質を使用を制限する規制があります。このように国ごとに独自に定められた規制を理解しなければなりません。異なる文化の中で、商習慣とルールをしっかりと理解し、適切に対応することが重要です。
▼RoHS(ローズ)指令について詳しくは以下の記事をご参考ください。
加工部品の海外調達を成功させるために、最も重要なポイントは「信頼性の高い調達先を選ぶこと」です。このステップが上手くいかないと、価格交渉、納期の管理、部品の検査などで問題が発生し、最終的には「コスト削減できなかった」「納期が遅れた」「不良品が納品された」といった問題につながります。これらの問題を未然に防ぐためにも信頼性の高い海外調達先を選ぶことが極めて重要です。海外調達も国内調達と同じく、小規模でも優れたサプライヤーは多数存在します。優れたサプライヤーは他社からの需要も高く自ら売り込みをしない傾向です。そのような優れたサプライヤーを見つけるためには、積極的に調達先を探求する努力が必要になります。
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本記事では、加工部品を「海外調達・購買」するメリット・デメリットをご紹介しました。海外調達はコスト面でのメリットが高いですが、一方で、品質・納期・取引面でデメリットがあるため、いかに信頼できる調達先を確保することが重要となります。
エージェンシーアシストでは、日本国内だけでなく、ベトナム・中国などのアジア圏の協力企業様と提携しています。ネイティブスタッフの対応により、これらの協力企業様と長きにわたり連携し、お客様のニーズに合った加工部品を数多く調達してまいりました。また、海外調達において懸念される品質面もベトナム現地に品質管理センターを設置することで、日本国内調達と同等の品質保証を実現しています。加工部品の海外調達先をお探し方は、お気軽にご相談ください。
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